新しい・お墓のデザイン・出会いと別離の物語 by 丸谷博男

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2010年 04月 10日

カルロ・スカルパ考 by古谷誠章NOBUAKI FURUYA

2005 東西アスファルト事業協同組合講演会より
「ブリオン家の墓地」

ここはひと区画の敷地の中では新築と言えますが、周りには共同墓地があって、村の並木道が続いています。ひとつながりの環境に対する増築であるということにおいて、スカルパにとって他の仕事と差がなかったと言えます。

夫婦の墓がL字型の敷地の中央に配されています。エントランス正面の双子の丸窓は、村の並木道から共同墓地を通り抜けた突き当たりに位置します。この丸窓は人を通そうとしているのか、止めようとしているのか分かりません。肉体だけはここで停まって魂だけは通り抜けろと言っているように解釈することもできます。エントランスから入って右手に折れたところにある水門のデザインは工芸的な手の込んだディテールです。

水の中に浮かぶように礼拝や瞑想のための小さなパビリオンが建っています。ここで人が立って見るのと座って見るのとでは目の前の光景に違いが出ます。立つと、上からは壁がおり、下からは塀が立ち上がり、その中で完結した世界ができ上がっています。それに対し、座ると風景は広がります。立つと、目の高さに対する配慮は横の塀にまで及んでいて、丸窓の高さも揃っています。

目の高さにあるということは透視図の描き方と同じで、目の高さは水平線の位置日消失点になります。水平線の位置にある塀より上にとび出ているものは見えて、下にあるものは隠れます。つまり、ここでは教会の塔は見えて、庶民的な家は見えなくなります。そういう巧妙な仕掛けをしています。

エントランス、夫婦の墓、親類の墓、共同墓地との境の塀、塀の向こうに見える教会などいろいろなものが並んでいます。ひとつとして同じものがないけれど全体が統一された落ち着いた空間ができ上がっているのが、最も私が感心しているところです。全部お揃いにして調和させるのは簡単です。形を同じにしたり、同じ色にしたり、同じ材料にしたり、何かを統一させて調和させることは簡単ですが、統一しないで調和させるのは難しいことです。下手なサッカーチームでも全員が坊主頭にして同じユニホームを着ていると強く見えたりしますが、これがもし体型もユニホームもバラバラだったら絶対勝てないようなチームになってしまう。スカルパの優れている点は全部バラバラなのにそれが統合されてひとつの調和をもたらしているということです。これこそが私たちがつくらなくてはならない都市や街の景観のひとつのヒントだと思います。今の時代に私たちがいかに都市景観をよくしようとしても、すべての人が同じ種類のコードでものをつくることは不可能です。そうではなくて、それぞれが違う個牲を持っているのにそれが並んでもかつ調和する方法を探さなくてはいけないと思います。
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by ohakadesign | 2010-04-10 07:56 | ❏お墓のデザイン・世界


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